@phdthesis{oai:mie-u.repo.nii.ac.jp:00015757, author = {石﨑, 大介}, month = {Mar}, note = {application/pdf, ウグイは日本産コイ科魚類で唯一, 河川残留型と降海型が存在する種である。ウグイの降海型の割合は北方ほど高く,降海要因はサケ科魚類と同様, 河川と海域との生産力の差により生活型が決定される有効餌料仮説が有効とされているが,分布域の比較的南方に位置している三重県の河川や滋賀県琵琶湖には, 降海型ないし降湖型が存在する。そのため, ウグイの回遊には有効餌料仮説以外の要因が関与している可能性がある。サケ科魚類では環境変動や種間競争が個体密度や成長に影響するため, 結果的にこれらが生活型の選択にも影響することが知られている。そこで, 中部日本の三重県加茂川と琵琶湖において, ウグイの回遊生態を解明するとともに,他魚種との種間相互作用の把握を行い, 生活型に多型が維持されている要因について考察した。 第1 章では,三重県加茂川の通し回遊型のウグイについて,回遊生態の把握と河川内における他の雑食性遊泳魚との食物をめぐる種間相互関係を把握した。第1 節では, 降海型が存在すると予想された当河川において, 春に産卵蝟集した個体について, 耳石微量元素分析により回遊履歴を推定した。9 4個体の耳石中心から縁辺部までの線分析の結果, 9 3 個体で海水域生活期が認められ, 耳石半径と標準体長との関係から,これらの降海体長は最小1 8 m m , 最大個体2 3 4 m m , 降海年齢は当歳または1 歳と推定された。一部の個体は降海後, 再度の淡水生活期が認められたが, 産卵前には再び海水生活に移行した。したがって, 当河川のウグイはほとんどが当歳か1歳で降海し, 一部の個体は淡水生活と海水生活を繰り返した後, 産卵期に河川に遡上すると考えられた。第2 節では, 耳石微量元素分析と採捕調査により降海時期を推定した。その結果, 純淡水域の産卵場付近では当歳魚と1 歳魚のC P U E は春から夏にかけて減少し, 同時期に汽水域で当歳魚が出現した。汽水域で採捕された1 歳魚には, 耳石微量元素分析により降海直後と判断された個体が存在し, それ以外の個体については降海時の推定体長から当歳で降海したものと推定された。したがって, 当河川のウグイは, 当歳か1 歳の春から夏にほとんどの個体が降海すると考えられた。第3 節では, アユ, ウグイ, オイカワ, カワムツの食物重複度をアユ遡上前の春, アユの存在する夏, アユの産卵死後の冬の3 回に渡り調査した。その結果, コイ科3 種の食物重複度は1 年を通して高く, 夏季において, ウグイはアユ, オイカワ, カワムツの全てと高い重複度を示した。このことから, 河川での魚類の競合がウグイの生活史に影響を与えている, すなわち, 降海の一要因になっているものと考えられた。 第2 章では, 琵琶湖と流入河川の石田川を回遊する非通し回遊型のウグイについて, 回遊生態および河川環境とウグイの生息の有無の関係を把握した。第1 節では, 採捕調査と淡水域間の回遊には適用できない耳石微量元素分析の代替手法として窒素安定同位体比分析を用いて当河川のウグイの回遊生態を調査した。その結果, 4 月から5 月の浮上後, 当歳魚C P U E が産卵場である流入河川域での急速な低下と同時に琵琶湖沿岸で上昇したことから, 当歳魚は孵上後すみやかに降湖したと考えられた。一方で, 9 月から1 0 月には, 流入河川下流域においてウグイのC P U E が上昇し, それらの個体の窒素安定同位体比は上流で採捕された個体だけではなく, 琵琶湖沿岸で採捕された個体とも同様な値を示し多様であった。したがって, この時期に下流域で採捕されたウグイには, 上流から降下してきた個体と琵琶湖沿岸から遡上してきた個体が混在していると考えられた。このことから, 石田川のウグイは多くの個体が浮上後直ちに琵琶湖に降湖するものの, 一部の個体は琵琶湖流入河川に秋季に遡上すると推定された。第2 節では, 琵琶湖流入6 河川において, 秋季に3 3 か所, 春季に3 4 か所で採捕調査を行い,河川環境とウグイの生息の有無を一般化線形混合モデルを用いて解析した。その結果, 秋季には「河口からの距離」,「電気伝導度」,「溶存有機炭素」といった河川環境とウグイの生息の有無との間に有意な関係が認められ, いずれも負に相関していたことから, 秋季のウグイは琵琶湖から遡上し, 有機汚濁の進んでいない河川を選択していると推察された。 以上の異なる2 水域のウグイの生活史に関する調査結果から, その生活型の選択には, ① 降海ないしは降湖による大型化, ② 降海ないしは降湖による生残率の低下, ③ 河川におけるアユやコイ科雑食性遊泳魚との競合, ④ 海( 琵琶湖) までの移動コストが複合的決定要因となって存在することが示唆された。そして, 中部日本においては, ウグイとニッチの競合する河川性の雑食性遊泳魚が多いことから, ③ の種間の競合が大きな要因となっていることが考えられた。, 本文, 135p}, school = {三重大学}, title = {中部日本におけるウグイの生活型多型に関する研究}, year = {2023}, yomi = {イシザキ, ダイスケ} }